こんにちは。調布そわ内科・整形外科の院長の曽和健誠です。
「最近、立ち上がるときに膝が痛い」「階段の上り下りがつらい」
こうした症状の多くは、変形性膝関節症が関係している可能性があります。この病気は中高年の方に非常に多く、特に女性に多いとされています。早めの対策で痛みを軽減し、進行を抑えることが可能です。
今回は当院でも非常に多くみている疾患の一つである変形性膝関節症に関して簡単にお話しできればと思います。
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症とは、膝関節への繰り返す負担や加齢などに伴い、膝の軟骨がすり減り、関節の変形や炎症、痛みを引き起こす慢性的な病気です。膝関節にある軟骨は本来クッションの役割を果たし、スムーズな動きを可能にしています。しかし、加齢や負担の蓄積により軟骨が摩耗すると、骨同士がぶつかり、痛みや腫れが起こるようになります。歩行時の最初の数歩や、椅子から立ち上がる時などに痛みやすく、進行すると歩行に障害が出てくるため、日常の生活動作に大きな影響を与えます。
少し古い報告にはなりますが、大規模疫学研究であるROAD研究(2009年)では、日本の変形性膝関節症の有病者数は約2,500万人であり、50歳以上で痛みを伴う変形性膝関節症の患者数は820万人と報告されています。高齢化が進む現在では、有病者数はさらに増えていると考えられます。
加齢、肥満、外傷、炎症などが発症や増悪因子(病状が悪くなる原因)として関わります。
治療方針
変形性膝関節症は、患者さんの日常生活に大きな影響を与え、非常に多くの方を悩ませている病気となり、当院ではそのような患者さんを多く診察しています。
重要な点として、すり減ってしまった軟骨は再生することはありません。
治療の基本は保存療法による痛みのコントロールや進行抑制になります。
保存療法を継続しても痛みが軽減せず、日常生活を送るうえで障害が強い場合には、年齢や活動性、関節変形の程度、骨や軟骨の位置関係などを考慮して手術療法も検討し、手術可能な病院へと紹介をおこないます。
保存療法は、「運動療法」と「薬物療法」をおこなっています。
運動療法
膝関節にかかる負担を軽減することを目的として、大腿四頭筋を中心とした膝関節周囲の筋肉の筋力増強訓練をおこないます。ご自宅で行うことができるものを紹介します。
運動をおこなうときの『コツと注意点』は以下の5点になります。
▶ コツと注意点
1. 運動前にストレッチをおこなう
ストレッチで筋肉を伸ばすと、関節周囲の腱や靱帯も一緒に引き延ばされて関節の動きがよくなります
2. 勢いや反動をつけずにゆっくりとおこなう
勢いや反動をつけると、関節の可動域を超えた動きとなってしまうため、腱や靱帯を痛める可能性があります
3. 呼吸を止めずに、リラックスした状態でおこなう
息を吐きながらに力をいれ、力を抜くときに息を吸います。呼吸をおこなうことで筋肉の過度な緊張を和らげることができます
4. 鍛えている筋肉を意識する
適切なトレーニングの姿勢や力の入れ方がわかるようになり、効率的なトレーニングになります
5. トレーニング中に痛くなる場合は無理をしない
関節に過度な負担がかかってしまうため、焦らずに、痛くない範囲で適度に行うことが大切です
『ストレッチ』は以下の2つをおこないましょう。
▶ ストレッチ
① 膝の周辺の筋肉を伸ばす
1. 仰向けになり、片方の太ももの裏を両手でかかえます
2. かかえた足を痛みがない程度に胸に引き寄せ、5秒間止めます
3. 5-10回繰り返し、反対側も同様におこないます

② 太ももの裏側の筋肉を伸ばす
1. 足を広げて座り、片方の足を曲げ、もう一方の足を伸ばします
2. 背筋を伸ばしたまま、伸ばした足の方向に身体を倒し、そのまま10秒間止めます
3. 5-10回繰り返し、反対側も同様におこないます

『トレーニング』は1日2回を目安に以下の4つをおこないましょう。
▶ トレーニング
① 太ももの筋肉をつける足上げトレーニング(A)
1. 椅子に腰かけ、片方の膝は曲げ、もう片方の膝は伸ばしておきます
2. 膝を伸ばしている方の足の足首を直角に曲げた状態にします
3. 膝を伸ばしている方の足をゆっくり上げて、床から10cmのところで5-10秒間止めます。その後ゆっくりおろします
4. 20回繰り返し、反対側も同様におこないます

② 太ももの筋肉をつける足上げトレーニング(B)
1. 仰向けになって、片方の膝を直角に曲げておきます
2. もう片方の足首を直角に曲げたまま、膝を伸ばします
3. 膝を伸ばした方の足をゆっくり上げて、床から10cmのところで5秒間止めます。その後ゆっくりおろします
4. 20回繰り返し、反対側も同様におこないます

③ 太ももの筋肉をつけるトレーニング
1. 壁に寄りかかり、こぶし1個分くらいの高さに丸めたタオルを両膝の下に入れます
2. 丸めたタオルを押しつぶすように片方の膝に力をいれ、5秒間そのまま力を入れ続けます。この際つま先は常に上に向けましょう
3. 20回繰り返し、反対側も同様におこないます

④ 膝の周辺の筋肉をきたえるトレーニング
1. 椅子に腰かけ、こぶし2個くらいの幅に丸めたタオルを、左右の膝の間に挟みます
2. 丸めたタオルを押しつぶすように内側に向けて膝に力を入れ、その状態を5秒間保ちます
3. 10回繰り返します

このほかにもプールでの歩行訓練は、膝への負担も少なく、筋力増強効果も高いため、おすすめです。
ご自身の努力のみではトレーニングが難しいこともあり、当院ではリハビリで理学療法もおこなっていますので、適宜ご相談いただくとよいかと思います。
薬物療法
変形性膝関節症は全身ではなく局所の疾患であるため、薬物療法も局所治療を優先します。
痛みと炎症の軽減を目的として痛み止めを使用する場合は外用薬(張り薬、塗り薬)を優先し、効果が不十分な場合には飲み薬を検討します。
長期の投薬になる場合は、薬の副作用にも十分注意しながら、薬の選択をしています。
ヒアルロン酸の関節内注射
ヒアルロン酸とは、関節液の主成分であり、膝のスムーズな動きを支えるクッションや潤滑油のような役割をしています。
変形性膝関節症では、関節内が炎症を起こすと関節液が多く分泌され、その結果、関節内のヒアルロン酸の濃度が低下してしまいます。
ヒアルロン酸の関節内への投与をおこなうことで、クッションや潤滑剤としての機能を補充し、痛みの緩和や炎症の抑制につながります。
膝内の関節液を多量に認める場合には、関節内注射で補充したヒアルロン酸の濃度が薄まってしまうことを防ぐために、関節内注射前に、関節液をある程度排出する場合もあります。
一般的には、1週ごとに計5回のヒアルロン酸の関節内投与をおこなうことで症状も軽快してくることが多いですが、症状緩和が不十分な場合には、2週間以上空けてから関節内注射を継続します。
関節内には血流がなく、注射や内服では抗菌薬が関節内に届かないため、関節内で感染を起こした場合には、関節内の洗浄が必要になったり、非常におおごとになってしまいますので、必ずこの注意点は守るようにしてください。
ステロイドの関節内注射
ヒアルロン酸の関節内注射を含めた治療が奏功せず、痛みや関節内に関節液を多量に認める状態が持続する場合に、炎症を抑えることを目的として、ステロイドの関節内投与をおこなう場合があります。
ただしこの場合は、関節内での感染症の存在を否定したうえで行う必要性があります。
おわりに
変形性膝関節症の治療は以下の点が重要になります。
- 運動療法(筋力トレーニング)
- ヒアルロン酸の関節内注射
- 経過や全身状態を考慮して手術適応を判断








