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循環器内科

JCI Insight に論文が掲載されました 〜マルファン症候群に関する新たな知見〜

こんにちは。
循環器内科医の 曽和 裕之 です。

私は東京大学循環器内科に在籍していた際、臨床と並行して医学研究にも取り組んでいました。このたび 2025年8月に、私の研究成果が『JCI Insight』という国際医学誌に掲載されましたので、今回はその内容について簡単に紹介します。

論文の詳細は、以下のリンクからご覧いただけます。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40875540/

命に関わる大動脈の病気

ニュースなどで耳にされたことがある方も多いかもしれませんが、大動脈の病気には、血管がこぶのように膨らむ大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)や、血管の壁が裂けてしまう大動脈解離(だいどうみゃくかいり)といった、命に関わる重篤な病気があります。

循環器内科医になってから、私は不思議と大動脈解離の患者さんを救急外来で担当し、そのまま入院担当医になることが多いと感じていました。典型的には激しい胸背部痛で来院されますが、中には非典型的な症例も少なくありません。

特に印象に残っているのは、下半身の麻痺と胸痛で救急外来に来院された50代の患者さんです。一人で救急対応をしていた際に、来院から約15分で診断に至り、直ちに心臓血管外科へバトンを渡すことができ、結果として発症前と変わらない生活で私の外来に通院されるまでに回復されました。この経験は、今でも強く心に残っています。

このような背景から、私は自然と大動脈解離という疾患に強い関心を持つようになり、大学では大動脈の研究に携わるようになりました。

マルファン症候群という病気

マルファン症候群は、生まれつきの遺伝子異常により、大動脈瘤や大動脈解離を起こしやすくなる病気です。

通常の大動脈瘤や大動脈解離の多くは、高血圧や動脈硬化といった後天的な要因が原因になります。しかし、マルファン症候群では、動脈硬化のリスクがほとんどない若い方でもこれらの大動脈の病気を発症するという大きな特徴があります。実際に、20代や30代で大動脈の手術を受ける方も少なくありません。

東京大学には「マルファン症候群センター」という専門チームがあり、多くの患者さんが通院されています。外来に通っていた方が、突然大動脈解離を発症して緊急入院し、私がその入院担当医になる、という経験もしました。

こうした患者さんが 大動脈瘤の破裂や大動脈解離といった血管イベントを起こさないように予防すること、を大きな目標として研究をおこなっていました。

研究で明らかになったこと

これまでの研究で、マルファン症候群の大動脈では炎症が起きていることは知られていました。しかし、その炎症がどこで、どのように生じているのか、その詳しい仕組みは分かっていませんでした。

私の研究では、

  • マルファン症候群では大動脈の周囲に存在する脂肪組織に特徴的な炎症が起きていること

  • その炎症が大動脈の拡張(瘤の進行)に強く関与していること

を明らかにすることができました。

さらに、『スタチン(悪玉コレステロールを下げる薬)』が、この炎症を抑え、将来的に マルファン症候群における大動脈拡大を抑制する治療薬となる可能性があることも示すことができました。

実際にマルファン症候群の患者さんへ治療として使用するためには、今後慎重な臨床研究が必要となりますが、新たな治療戦略への重要な一歩になったと考えています。

研究マインドを忘れずに日々の診療を

研究室の上司や同僚など、多くの仲間に恵まれ、病態の解明や治療への応用可能性の提示というところまで到達できたこと、そしてそれを論文として世に発信できたことを、大変うれしく思っています。改めてこの場をお借りして、ご指導・ご協力いただいたすべての先生方に心より感謝申し上げます。

現在も、私が所属していた研究室ではマルファン症候群や、血管周囲脂肪組織の研究が継続して行われています。今後の研究の進展にも、少し離れた場所から楽しみに注目していきたいと思っています。

研究マインドともいえる、患者さんのお話を丁寧に伺うことで情報を集め、しっかり分析する視点を持ち続ける、ということをこれからも大切にしながら、日々の診療に全力で取り組んでいこうと思います。

何気ない会話から原因や解決策が見つかることもあります。どうぞ気軽に相談をしに来てくださいね。

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