こんにちは。調布そわ内科・整形外科で内科・循環器内科を担当しております、曽和裕之です。
今回は、近年あらためて注目されている帯状疱疹と、その予防であるワクチンについてお話しします。
「帯状疱疹=皮膚の病気」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実はそれだけではありません。
最近では、全身の健康にかかわる病気としての側面が注目されています。
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、水ぼうそうの原因であるウイルスが再び活性化することで起こります。子どものころに感染したウイルスは、水ぼうそうが治った後も神経の中に潜伏しており、加齢や疲労・ストレス、免疫力の低下などをきっかけに再び活動を始めます。
その結果、以下のような症状が出現します。
- 身体の片側に帯状に現れる発疹
- ピリピリ・ズキズキとした強い痛み
実際、水ぼうそうにかかったことがある方の約3人に1人が、一生のうちに帯状疱疹を発症する可能性があるとされています。
一番の問題は「後遺症の痛み」
帯状疱疹で特に問題になるのは、皮膚の症状が治った後も痛みが続くことです。
これは「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼ばれ、以下のような特徴があります。
- 数カ月から数年にわたって続くことがある
- 洋服が触れるだけでも痛みを感じる
- 夜も眠れないほど強い痛みがでることがある
このように、生活の質(QOL)を大きく低下させてしまいます。
特に高齢の方ほど発症しやすく、一度発症すると治療が難しいのが現実です。
ワクチンで予防ができます
現在は、帯状疱疹を予防するワクチンがあります。
ワクチンには大きく分けて、生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があり、帯状疱疹ワクチンも同様に2種類存在します。当院では不活化ワクチンのシングリックス®のみを採用しています。
生ワクチンと不活化ワクチンの主な違いは以下の通りです。
・生ワクチン:1回接種で済みますが、予防効果はやや低く、免疫が低下している方には接種ができない場合があります
・不活化ワクチン:2回接種が必要ですが、発症予防および後遺症(PHN)の予防効果が高く、免疫が低下している方にも接種可能です
またシングリックス®と生ワクチン(ビケン®)の特徴については、以下の表をご参照ください。
| 特徴 | 不活化ワクチン (シングリックス®) | 生ワクチン (ビケン®) |
|---|---|---|
| 接種回数 | 2回(2カ月以上の間隔) | 1回 |
| 発症予防効果 | 非常に高い(臨床試験で約97%) | 中程度(臨床試験で約51%) |
| 痛みの予防効果 | 非常に高い(臨床試験で約91%) | 中程度(臨床試験で約67%) |
| 効果の持続 | 10年以上 | 年数とともに低下(5-8年程度) |
不活化ワクチンの副反応としては、接種部位の痛みや倦怠感、発熱などがありますが、多くは数日以内に自然に軽快します。
シングリックス®の不活化ワクチンとしての特性に加え、高い予防効果と効果の持続期間が期待できることから、当院ではシングリックス®を採用しています。
最新の話題①:認知症との関係
帯状疱疹ワクチンの接種が、将来の認知症リスクを低下させる可能性について、近年複数の研究報告が発表されています。中でも2025年に『Nature』誌に掲載された論文は、非常にインパクトのある内容でした。
本論文では、約28万人を対象とした7年間の追跡において、帯状疱疹ワクチンの接種により、認知症発症リスクが約20%低下することが示されました。
ワクチンと認知症の因果関係に比較的近づいた研究であり、「帯状疱疹ワクチン=認知症予防の可能性」を広く知らしめるきっかけとなった論文といえるでしょう。
他にも、女性の方が認知症予防の効果が大きい可能性や、不活化ワクチンの方がより高い認知症予防効果を示す可能性なども報告されています。
ただし、いずれの研究においても「帯状疱疹ワクチンの接種=認知症予防」と明確に位置付けるだけの因果関係の証明には至っていない点には注意が必要です。
現時点では、「帯状疱疹を予防する目的でワクチンの接種をおこない、その結果として認知症予防効果も期待できる可能性がある」と捉えるのが現実的でしょう。
では、なぜ帯状疱疹ワクチンの接種が認知症と関連する可能性があるのでしょうか。
主に以下のような仮説が提唱されています。
- ウイルスの再活性化による脳・神経の慢性炎症を抑制する
- 不活化ワクチンに含まれる免疫賦活成分(アジュバント)が免疫応答を高め、脳内循環に影響を及ぼす
帯状疱疹は、神経節に潜伏しているウイルスが再活性化することで発症します。ワクチン接種によりこの再活性化を抑制することで、神経や脳における慢性的な炎症が軽減され、その結果として認知症の発症に関与する異常タンパク質の蓄積が抑制される可能性が考えられています。
また、アジュバントによる免疫活性化が、これらの異常タンパク質の排除を促進する可能性についても研究が進められています。
今後、因果関係や作用機序がさらに明らかになることが期待されます。
最新の話題②:心筋梗塞や脳卒中のリスク低下
近年、帯状疱疹は心筋梗塞や脳卒中といった血管疾患のリスクにも関係する可能性が指摘されています。帯状疱疹の発症により、血管の炎症が引き起こされることで、これらの疾患のリスクが一時的に高まると考えられています。
複数の研究を統合したメタアナリシスでは、帯状疱疹ワクチンを接種した人は、未接種の人と比較して、心筋梗塞や脳卒中などのイベントのリスクが約16~18%低下することが示されました。
ただし、今回の解析に含まれた研究の多くは観察研究であり、「ワクチンを接種したからリスクが低下した」と断定することはできません。また、一般の集団を対象とした研究であるため、心血管疾患のリスクが高い方にそのまま当てはめられるかどうかについても、今後の検討が必要です。
接種費用
帯状疱疹ワクチンの接種費用についてご説明します。
市区町村からの助成を受けて行うワクチン接種は「定期接種」と呼ばれます。令和8年度の定期接種(調布市、府中市)における対象者、実施期間、費用については以下の表の通りです(次年度以降の予定は、現時点では未定です)。
| 対象者 | 令和8年度中に 65, 70, 75, 80, 85, 90, 95, 100歳の方で、 調布市、府中市のご在住の方(接種券の届いた方) |
|---|---|
| 期間 | 令和8年4月1日~令和9年3月31日 ※1回目の接種と2回目の接種は2カ月以上の間隔を空ける |
| 費用 | 11,000円/回(調布市の方) 10,000円/回(府中市の方) ※2回接種が必要です |
上記に該当しない方は、自費での接種(任意接種)となり、費用は以下の通りです。
▶ 22,000円/回 (全2回接種)
まとめ
- 帯状疱疹は、ワクチンで予防することができます
- 当院では、高い予防効果が期待できる不活化ワクチンによる2回接種をおこなっています
- 帯状疱疹ワクチンの接種により、認知症や心筋梗塞、脳卒中の発症リスクを低下させる可能性があります
当院では、電話または受付窓口にて帯状疱疹ワクチンのご予約を承っております。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。







